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表紙絵インタビュー

No.150(2025年)

表紙絵への想い

畠中光享 先生 インタビュー
インタビュアー
 無盡燈編集委員 川端 泰幸(大谷大学 准教授)
対談日 2025年1月

畠中光享先生には、同窓会報『無盡燈』の表紙絵を108号(1997年10月発行)から長年ご担当いただき、この150号(42作品)をもって終了することとなりました。
この機会に先生に、大学時代の思い出、絵の世界を目指したきっかけ、インドへの想い、同窓会と表紙絵に関する思い出などについて、お話をうかがいました。

 

■ 表紙絵をご担当いただいた経緯を教えてください

 1997年に佐々木令信先生(名誉教授/文学部史学科)よりお話をいただき、2~3年間の担当だろうと思い引き受けたところ、28年も続きました。指導教員としてご指導いただいていた藤島達朗先生(名誉教授/文学部史学科)との関係で、佐々木先生とは学生時代からのお付き合いでした。
 

■ 歴史を専攻されたきっかけは

 高校卒業後は色々なことがありましたが、父親から「ただの坊さんになってくれた方が尊い、仏教を学びに大谷大学に行かんか」と言われたことが転機となり、大谷大学を目指しました。
 もともと歴史に興味があり、中学生の頃、地元の奈良で『奈良県文化財調査報告書』を愛読書として、文化財に指定されている仏像を全て見てまわっていました。
 そんな経験もあり、大谷大学では日本仏教史を専攻しました。当時は月に一度の史跡踏査に加え、年に一度は泊りがけでの現地調査があり、とても有難かったことを記憶しています。
 また、在学中のゼミ発表では「解脱上人貞慶」を選び、興福寺や笠置寺など頻繁に訪れていたのですが、大学を離れて数十年後の2018年、三百年ぶりの「興福寺中金堂落慶」にあたり14人の祖師像制作のご依頼をうけた折、最後の祖師像が「貞慶」であったことは不思議なめぐり合わせだったと感じています。
 

■ 絵画を専門にされたのはいつ頃ですか

 幼少期より絵も好きで描いてきたのですが、専門にしたいと考えたのは大学4年生の頃です。きっかけは個展を開いたことでした。
 入学した年に短期大学部に幼児教育科が開設されて画家の下村良之介先生が教員として着任されました。2年生の時、縁あって知り合い、授業の無い時間は図工室を使わせてもらうことができました。卒業後、インドに行くまでの3年間、松原祐善元学長の公認で使わせてもらえた自由な大学でした。
 

■ 先生とインドの関係はどのようなものですか

 初めてインドに行ったのは1974年で、13カ月滞在しました。絵に行き詰っていたこともあったと思います。
 最初は、ネパールに行き、大谷大学OBでネパール大使館の書記官をされていた菊池法純さんに下宿をお世話していただきました。その後、ネパールからインドへ行き、最初はひと月かけて仏跡を巡礼しました。私はインドの文字(デーヴァナーガリー)の読み書きはできたのですが話せなかったので、ネパールに戻って3カ月ヒンディー語の勉強に打ち込み、午前は語学、午後は写生をして過ごしました。写生をしているとネパール人が寄ってくるので自然とネパール語もわかるようになりました。
 今まで100回以上インドに行っていますが、同じところへ3回は行かないとわからないと思っています。
 また、インドにいると、「私、私」と思っていた自分が、周りの人たちや自然のおかげで生かされていることがよくわかるようになりました。
 

■ 表紙絵はどのように選定されているのですか、また、絵とあわせてお寄せいただいているメッセージについてもお聞かせください

 その時々の思いで選んでいます。私は文章を書くのも好きなので、メッセージも大切にしています。メッセージが書けない
絵は「ただ、きれいだな」で終わってしまうと思っています。前号(149号)の表紙絵「天災の風景(部分)」は、インドの水害を描いたものですが、能登半島地震で被災された方々に思いを寄せて選びました。2011年の136号の際は、東日本大震
災の起こった年でもあったのでインドの原子力発電所を描いた「煙」を表紙絵にしました。特に大きな災害のあった時には、
被災された方々の心に寄り添う人でありたい。「わが身に置き換えて」生きるしかないという思いで選んできました。
 

■ 最後に大谷大学に向けてのメッセージをお願いします

 経営重視の大学も世の中にはたくさんありますが、大谷大学は他の大きな大学の真似をしてもしかたありません。小さくても真宗を基本とする仏教の大学であること、どの学部学科であっても仏教を基本においた大学であって欲しいと思います。
 

先生には長年にわたりお世話になりました。ありがとうございました。
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