同窓通信
No.150(2025年)
小池 泉
(1995年度文学部文学科卒)

2023年10月に行われた日本空手協会熟練者世界大会、年齢別で行われる大会の形競技において金メダルを獲った。
始まりは空手道部への入部だった。初めて出会った空手という競技、体育会空手道部という環境、上下関係、全てが新鮮でひたすら稽古した。
卒業と同時に空手から離れたが、数年後に町道場に通い始めた。五大都市大会の京都府代表として出場の機会をいただき、そこで全国や世界で活躍された選手と共に過ごした事で空手への熱は高まった。自分ももっと大きな大会に出てメダルを取りたい。自分より格段に優れた選手に強い憧れを持った。
地元広島で新たな転機が訪れた。当時通い始めたばかりの道場を引き継ぐ事になったのである。今指導を行っている日本空手協会広島支部松濤塾、ここで突然先生と呼ばれる立場を押し付けられた。その重圧に初めて空手をやりたくないと思った。
しかし、時と共に環境に慣れだんだん教える事にも熱が入り始めた。初めて道場生がインターハイに出場した時はとても嬉しかった。私にできる事は自分が頑張る姿を見せる事だった。それが精一杯だった。今でもそれは私の原動力である。先生と呼ばれて恥ずかしくないようにという一心でできる限り試合に出ている。悲願の国体出場が叶ったのは長女を出産してからだった。組手で国体に出場経験のある夫に追いついたと思った。そして長女もまた国体選手となった。

近年では道場生が全国大会に続いて出場してくれている。その子達の一歩先を行ってやるという意気込みで挑んだ世界大会。日本の出場枠は各階級4名。YouTubeでライブ配信もあり道場生達もリアルタイムで応援してくれた。緊張と不安と期待で迎えた本番。優勝する事ができ、海外選手からも祝福の言葉をいただいた。あの日の興奮は生涯忘れる事はないだろう。
人生の宝物となったこの経験は大学時代に私に空手を教えてくださった師範、監督、諸先輩、そして共に過ごした同期や後輩のおかげである。心から感謝している。もちろん今の活動を理解し、支えてくれている家族にも。次女も高校の空手道部で汗を流している。家族で空手に携われる毎日は部活の合宿のようだ。もちろん身体はキツくいつも時間に追われているが楽しい。
空手道部で過ごした4年間は私の大切な時間である。