無盡燈/尋源館
無盡燈読むページ

同窓通信

No.144(2019年)

青木馨氏博士(文学)学位を授与

 2018年3月23日同窓生青木馨氏が「本願寺教団展開の基礎的研究―戦国期から近世へ―」で大谷大学より博士(文学)の学位を授与され、同名書として法藏館より公刊された。
 青木氏は、大谷大学文学部史学科日本仏教史分野を卒業後、同大学院修士課程仏教文化専攻に進学、修了された。その後、自坊の法務をつとめながら、同朋大学仏教文化研究所客員所員などをつとめ、真宗史研究を今日まで深められた。その長年の研究成果をまとめられたのが今般の博士学位請求論文である。

 本論文は、愛知県の三河地域を中心に本願寺教団の戦国期から近世への展開を、本寺本願寺の社会的身分上昇の問題と、その地域寺院や道場への展開としてとらえようとしたものである。また本願寺教団の展開にあたり、身分獲得の動きと連動して由緒書が創成されたというユニークな視点を取り、高い独自性をもつ論文でもある。

 内容の詳細は省くが、第Ⅰ編「三河における地域道場から教団への展開」、第Ⅱ編「本願寺門主制と近世の末寺身分」、第Ⅲ編「本願寺下付物と墨書名号」に序論・補論・総論・結語が配されている。

 学術的にすぐれた点は多いが、顕著なものを示すと、まず、当該地域の精力的な寺院調査により発見、収集された本尊裏書や古文書をもとに、三河本願寺教団の実態解明が相当進められたことである。次いで歴史学分野ではあまり取り上げられていない真宗の装束を分析し、真宗史研究に新たな観点を開いた。また願力寺文書の分析は、近世において本願寺末寺院が行った寺格上昇のための由緒・伝承創成の事実を明らかにし、本願寺末寺調査で多く見られる由緒書の歴史的価値に新しい視点を見出した。そして墨書の六字名号の分類と筆者の推定は、末寺調査で散見する墨書名号の筆者推定のメルクマールであり、その業績は大きい。現に青木氏の名号分類は既に社会的に広く認められ、本願寺末寺院調査に度々援用されている。

 以上のように本論文の学術的価値はきわめて高く、今後の真宗史研究において必読書となることは間違いないといえる。

(大谷大学教授 宮﨑 健司)

青木 馨氏

1979年3月 大谷大学大学院修士課程文学研究科仏教文化専攻修了
2018年3月 大谷大学博士(文学)学位取得

本来、同窓会報『無盡燈』143号(2018年9月発行)にてお知らせすべき内容ですが、前号において掲載漏れがございました。青木馨氏をはじめご関係の皆さま方に大変ご迷惑をおかけいたしました。なお、本文につきましては、副査を担当されました宮﨑教授に執筆いただきました。


お蔭様
岡本 了壽藍石 らんせき

 私が書道部に入部したのは、2回生の時でした。当時は40名位の部員数だったと思います。

 先輩の佐々木宏遠先生に御指導を頂き、初めて半切作品を書き、学内展に出品しました。その後、周囲の先輩方のお誘いで3回生の冬に古谷蒼韻先生に入門し、4回生の時には書道展や日展に初出品しました。「出品する事が勉強」と言われ、以降毎年日展に出品しています。初入選は1985(昭和60)年で、大変嬉しかった事を覚えています。それから時は流れ、2016(平成28)年に初めての「特選」を受賞いたしました際には、作品に責任を持つ事の重要性をひしひしと感じました。その頃はまだ会社勤めでしたから、早朝4時から6時までが書の勉強時間でした。夜に書作をすると気が高ぶり眠れないため、先生の助言を頂き出勤前に書く事が習慣でした。

 そして2018(平成30)年の「改組 新 第5回日展」では、再度の「特選」という栄誉を賜りました。

 この時は9月の締め切りに向けて、4月初旬から検討を始め、唐代の僧の懐素の自叙帖を基とした行草体で書こうと決めました。漢詩を題材とし、そこから3~4首を選文して、横へ展開していきます。また、作品は起承転結を意識したことが見える様に工夫しています。しかし、もっと大切な事が「気韻生動」です。これは、気持ちが先に動いて、筆がそれに従って動くことです。「意前筆後」も同じでとても難しいのですが、それに加えて鮮度や気迫も大切です。枚数を書くと鮮度が落ちる為、詩文を変えて書く工夫もしました。

 そんなこんなで、9月の末に作品を提出しました。たった一枚を出品する為に長い時間と多くの画仙紙が必要でした。

 2018(平成30)年の夏に古谷先生が急逝されたため、受賞のご報告は墓前でした。長年にわたり厳しくも温かい御指導を賜りました古谷先生のお蔭と心より深く感謝申し上げます。そして、励まして頂きました諸先生、諸先輩、友人、家族にも感謝し、お礼申し上げます。

 今後も、ご縁を頂戴した方々に感謝しつつ、更に精進し、書に邁進してまいります。有り難うございます。

岡本 了壽(おかもと りょうじゅ)氏

1977年3月 大谷大学文学部真宗学科卒業
1985年   「改組 第17回日展」 /初入選
2016年   「改組 新 第3回日展」/「特選」受賞
2018年   「改組 新 第5回日展」/「特選」再受賞
他、多くの賞を受賞。
2018年の「特選」再受賞にあたり、本文を寄稿いただきました。

Copyright © Otani Univ. KOUYU Center. All Rights Reserved.